2012年4月25日水曜日

うつ病・トラウマの症状は「自分の力」で克服できる: 実践するためのアドバイス 質問と回答⑤アーカイブ


 性的なトラウマの治療に関する質問に回答しています。また、罪悪感の治療に関することにも回答しています。



 【件名:けいじさん、よろしくお願いします。】

 Q1. 曝露療法に有効な体験と、効果のない体験はあるのでしょうか?

 私が曝露療法で再認識して克服したい過去は次の通りです。

 1.兄からの性的いたずら、言葉

 2.幼少時(小学校2年くらい)、近所の子達とした「お医者さんごっこ」

 ※私がお医者役で、他の子のお尻を見ました。無理やりではなく当時は遊びの
   つもりでしたが、それがひょっとして近所の 子に性的トラウマをあたえていた
   ら・・と思うととても苦しいです。

 1.は私は被害者ですが2.は加害者になります。加害者にもこの療法が有効なの
   かが気になります。

 Q2. 体験が家族、実家の近所の子なのでこれからも顔をあわす機会がありま
     す。その場合でもこの療法は有効なのでしょうか?

 ここ数日記憶があふれだし、ネガティブな発想がとまりません。自分は屑だと思います。生後五ヶ月の息子がいますが「こんな屑の遺伝子がうけつがれていたら、、」と不安ばかりです。
 
 大変お手数ですが、ご返信いただけたらありがたいです・・・


 【件名:質問に対する回答です】


 『うつ病・トラウマの症状は「自分の力」で克服できる』、管理人の、けいじ、です。

 では、ご質問に答えたいと思います。

Q1. 曝露療法に有効な体験と、効果のない体験はあるのでしょうか?


 まず、「兄からの性的いたずら、言葉」のトラウマに関してですが。 

 曝露療法は、性的いたずら(性的虐待)のトラウマを癒すための、非常に有効な手段になります。

 そのことは、国際トラウマティック・ストレス学会理事会が1997年に設置した「PTSD治療ガイドライン特別作業班」により作成された「PTSD治療ガイドライン」という本に載っている、次の文章を見ても分かります。


減量は、プログラムを比較する


 『厳密に対照をとった2つの研究が、女性の性的暴力被害者に対するEX(注:曝露療法)について検討している(For,1991,1999)。いずれもAHCPR(注:米国の医療政策研究局)のレベルA(注:推奨レベル。レベルAの意味は、行うよう強く勧められる)を受け、臨床効果研究の7つのゴールドスタンダード(注:信頼性のある厳密な評価基準)をすべて満たした。したがって、EXが効果的という点については、確固たる結論が下せる。』


 また、「参考記事」のページの『恐怖を再現、乗り越える』という記事で紹介されている、曝露療法を行うことにより、性的いたずらのトラウマを克服した人の体験を読んでも、曝露療法が性的いたずらのトラウマを癒すための、非常に有効な手段になることが分かります。

 次に、幼少時(小学校2年くらい)近所の子達とした「お医者さんごっこ」に関してですが。

 自分が加害者で強い罪悪感を感じている場合、一般的に言って、その加害者の罪悪感の治療は、被害者の症状を治療する場合に比べて難しくなります。

 そのことは、上記で紹介した「PTSD治療ガイドライン」という本に載っている、次の文章を見ても分かります。


 『予備調査であるが、加害者、とくに罪悪感が主要な感情、という症例では、EXは効果がないという結果も出ている~(略)~しかしながら、EXはPTSDの治療としては、最良の結果が出ているので、この選択を取らないという理由が明らかに存在する場合以外は、第1選択として考慮すべきである。』


 この文章から、加害者の罪悪感の治療は、被害者の症状を治療する場合に比べて、難しくなるということが見てとれます。

 けれども、現在の私は曝露療法を行うことにより、「罪悪感で苦しくてしょうがない」という状態からは逃れることが出来ているため、上記の「加害者、とくに罪悪感が主要な感情、という症例では、EXは効果がないという結果も出ている」という文章に対しては違和感を覚えます。


ミルクとにきび

 (この本でも曝露療法は"第1選択として考慮すべきである"とされており、「効果が無いという結果も出ている」という研究結果は決定的なものではありません。ただ、強い罪悪感の治療では、難しい面があるのは確かだと思います)


 個人的に、曝露療法は罪悪感を癒すための有効な手段になると感じます。

 しかし、曝露療法だけでは不十分で、罪悪感を本当の意味で癒すためには、それに加えて、ある気づきを得ることが重要になると、私は考えています。

 では、その気づきとは何なのかと言うと、それは「自分が過ちを犯してしまったのは、ある程度、仕方のないことだったんだ」ということです。

 この気づきは、私の心をとても軽くしてくれました。

 この気づきを得ることは、罪悪感の苦しみを癒すために、とても重要になることだと思います。
   
 (○○さんの場合、お医者さんごっこのことで自分を責める必要は無いと思います。小学校2年生ぐらいの頃は、性的なタブーに関する意識は薄く、タブーに関することを遊びで行ってしまうのは仕方のないことだと思います。それは、防ごうとしても、その年代の子どもでは防ぐことが難しいことなのではないでしょうか)

 また、気づきを得た上で曝露療法を行うと、「自分を許し、労わる」という感覚で曝露療法を行うことが、より出来るようになるため、以前よりも自分の心を効果的に癒すことができます。

  
 なお、この「お医者さんごっこ」に関して、○○さんは、「近所の子に性的トラウマをあたえていたら・・と思うととても苦しい」というふうに、あまり心配する必要はないと思います。

 なぜなら、お医者さんごっこでトラウマが発生する可能性は低いからです。

 トラウマが発生する原因は、被害者がショッキングな出来事に遭遇しているときに「私にはどうすることもできない」という強烈な無力感を感じ、その体験がストレスホルモンの作用により、脳に深く記憶されることにあります。


肥満は思春期の問題になった時

 お医者さんごっこは、性的虐待のような強制的な行為では無く、合意の上で行う行為なので、「私にはどうすることもできない」という強烈な無力感を感じにくい状況にあります。そのため、お医者さんごっこが原因でトラウマが発生する可能性は低いと考えられます。

 ○○さんの場合は、「無理やりでは無く、遊びのつもりだった」ということなので、なおさら、そのお医者さんごっこが原因でトラウマが発生する可能性は低いと思います。

 
 (近所の子がお医者さんごっこのことをトラウマに感じている可能性は低いです。そのため、近所の子は、お医者さんごっこの出来事を、もうほとんど忘れているか。覚えているにしても、全然気にしていないか、笑い話にしてしまうような出来事として記憶しているのではないでしょうか。そのような理由があるので、近所の子がトラウマに感じているのか、どうしても気になるのでしたら、思い切ってお医者さんごっこのことを相手に聞いてみても良いかもしれません。覚えていないか、全然気にしていないか、笑い話になるかの、いずれかになる可能性が高いです。もし、近所の子がトラウマに感じているとしても、そのときは、自分の申し訳ない気持ちを素直に話して、相手に心から謝罪すれば良いのではないでしょうか。そ� �すれば、その人の心は癒されます)

 
Q2. 体験が家族、実家の近所の子なのでこれからも顔をあわす機会があります。その場合でもこの療法は有効なのでしょうか?


 はい、有効です。

 ただし、それは、「自分はそんな感情を感じたくない」「そんなふうに感じるべきじゃない」という行為をしなかった場合です。

 曝露療法は、自分の感情をあるがままに受け入れることにより心を癒す方法です。

 そのため、相手に遠慮して、曝露療法を行っているときに「自分はそんな感情を感じたくない」「そんなふうに感じるべきじゃない」という行為をすると、自分の心は癒されません。

 心を癒すためには、自分の心に存在するネガティブな感情をあるがままに受け入れることが重要になります。


 (記憶があふれ出しているのならば、その記憶をあるがままに受け入れることが大切になります)

 
 性犯罪被害者の方は、普通、強い自己嫌悪や羞恥心に苦しみます。そのため、「自分は屑だ」と考えてしまうことは、仕方のないことだと思います。(性犯罪被害者の方ならば誰しもそのように苦しみます)

 けれども、治療が進めば、そういった気持ちがだんだんと消え、自分を労わる気持ちや、やさしく思う気持ちが自然と湧き上がってきます。

 そうなれば、自分の自己嫌悪や羞恥心の気持ちを克服することも可能になります。


 曝露療法は性犯罪被害の症状に対して、高い治療効果を発揮します。そのため、曝露療法は○○さんのトラウマ、および、自己嫌悪や羞恥心の気持ちを改善するための、非常に有効な手段になるのではないかと思います。

  
 アドバイスは以上です。

 ○○さんのご健康とご活躍をお祈りしています。


 【件名:Re:質問に対する回答です】


 けいじ様

 お忙しい中丁寧なご説明誠にありがとうございました。

 再度熟読して曝露療法の理解を深めたいと思います。

 冷静に私の状況を判断していただいて

 励まされました。本当にありがとうございました。

 ―補足情報

 「自分が過ちを犯してしまったのは、ある程度、仕方のないことだったんだ」と考えることは、「自分には全く責任がないのだ」というふうに考えることではありません。



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